2026.10.14 症例・症状コラム
顔面神経麻痺の診療ガイドラインで鍼灸はどう変わった?鍼灸師がわかりやすく解説
突然顔が動かなくなり、病院で「顔面神経麻痺」と診断された。薬を飲みながら、ほかにできることはないかと調べている。そんな方の中には、「鍼灸って本当に意味があるの?」と迷っている方も多いのではないでしょうか。
実は2023年、顔面神経麻痺の診療ガイドラインが12年ぶりに改訂され、鍼灸の位置づけが大きく見直されました。
はりきゅう処えのん院長の光山です。耳鼻科専門院での勤務を経て、現在は顔面神経麻痺・耳鼻喉の症状・自律神経症状を専門に施術を行っています。この記事では、顔面神経麻痺を専門にしている鍼灸師の立場から、ガイドラインで何が変わったのか、そして病院の治療と鍼灸をどう組み合わせればよいのかを、わかりやすくお伝えします。
そもそも「診療ガイドライン」とは?
診療ガイドラインとは、その病気について、これまでの研究結果をもとに「どの治療がどのくらいおすすめできるか」を専門家がまとめたものです。病院の先生が治療方針を決めるときの、ひとつの目安になります。
顔面神経麻痺については、日本顔面神経学会が作成しています。2011年に『顔面神経麻痺診療の手引』が出され、その後12年ぶりに、2023年5月に『顔面神経麻痺診療ガイドライン』として新しく公開されました。
なお、ガイドラインは治療を決める唯一のルールではなく、あくまで目安です。実際の治療は、お一人おひとりの状態に合わせて決められます。
2023年の改訂で何が変わったのか
| 2011年『顔面神経麻痺診療の手引』 | 2023年『顔面神経麻痺診療ガイドライン』 | |
|---|---|---|
| 鍼灸の位置づけ | 科学的根拠がないので勧められない | 弱く推奨する |
| 発症初期(急性期)の早期回復 | 勧められない | 弱く推奨する |
| 後遺症(慢性期)の症状の軽減 | 勧められない | 弱く推奨する |
2011年の手引では、鍼灸は「科学的根拠がないので勧められない」とされていました。
それが2023年の改訂では、「発症初期の回復を早めるか」「後遺症の症状を和らげるか」という2つの問いの両方について、「弱く推奨する」へと変わりました。「推奨しない」から「推奨する」側へ、評価が大きく変わったことになります。
ここでいう「弱く推奨する」は、「効果が弱い」という意味ではありません。「行うことを提案するが、根拠の強さはまだ十分とはいえない」という意味合いです。
なぜ見直されたのか
この12年の間に、国内外で顔面神経麻痺と鍼灸に関する研究が積み重ねられてきました。そうした研究結果が評価され、今回の改訂につながったと考えられています。
また、新しいガイドラインをふまえて、医療機関と連携しながら麻痺の時期を見極め、その時期に合った鍼灸とセルフケアを行うことが、鍼灸師の役割だと示されています。
ただし、鍼灸が病院の治療に代わるものになった、という意味ではありません。顔面神経麻痺は、まず病院で診断を受け、必要な治療を受けることが基本です。そのうえで、回復を後押しする選択肢のひとつとして、鍼灸が認められるようになったと考えてください。
えのんの考え方:顔に鍼をしない理由
顔面神経麻痺の鍼灸というと、顔にたくさん鍼を刺すイメージを持たれる方も多いかもしれません。
えのんでは、顔に直接鍼をしません。顔面神経麻痺の回復には、血液の流れが大切だと考えているからです。手足や背中のツボを使い、顔面神経へ血液の流れを届けることを目的に施術を行っています。
神経に回復に必要な栄養は血液と一緒に流れています。そのため血液の流れを常に顔面部や顔面神経に通しておくことが必要となります。
当院に来られる顔面神経麻痺を発症された方の体の特徴は、首や肩が凝っている方、顔面麻痺を発症する前に耳の後ろに痛みがあった。食いしばりや歯ぎしりの癖がある。最近睡眠がうまく取れておらず、疲れやすい。
こういった体の特徴がある方は、血液の流れが悪くなっており、顔面神経の回復を妨げているかもしれません。
1回の施術で鍼をするのは3〜5箇所ほど。刺激の少ない施術なので、鍼が初めての方にも安心して受けていただけます。
病院の治療と鍼灸、どう組み合わせる?
1. まずは耳鼻咽喉科で診断を受ける
顔面神経麻痺は、原因や重さによって治療が変わります。まずは病院での診断が第一歩です。
2. 病院の治療と並行して鍼灸を始める
ステロイドなどのお薬と鍼灸は併用できます。服用中のお薬や検査結果は、初回のカウンセリングで教えてください。
3. 時期に合わせて施術とセルフケアを続ける
発症初期、回復期、後遺症が気になる時期では、大切にすることが変わります。今の時期に合った施術とセルフケアをご提案します。
顔面神経麻痺は、できるだけ早い時期から施術を始めることが大切だと考えています。えのんでは、発症直後からご相談いただけます。通院の目安は週2回ほどです。発症から時間が経っている方、後遺症でお悩みの方も、諦める前に一度ご相談ください。
まとめ
- 2023年、顔面神経麻痺の診療ガイドラインが12年ぶりに改訂されました
- 鍼灸は、発症初期と後遺症の両方について「推奨しない」から「弱く推奨する」へ見直されました
- 病院の治療を基本にしながら、時期に合った鍼灸とセルフケアを組み合わせることが大切です
「鍼灸を受けてみたいけれど、自分の状態で大丈夫かわからない」という方も、まずはお気軽にご相談ください。今の状態をうかがったうえで、わかりやすくご説明します。
ご予約・ご相談はLINEから24時間受け付けています。えのんの顔面神経麻痺の施術については、顔面神経麻痺の施術ページでも詳しくご紹介しています。
参考文献
- 日本顔面神経学会 編『顔面神経麻痺診療ガイドライン 2023年版』
- 羽藤直人・森嶋直人・粕谷大智「顔面神経麻痺診療ガイドライン 2023年版からみる鍼灸の現状と可能性」全日本鍼灸学会雑誌 74巻4号(2024)
- 堀部豪「末梢性顔面神経麻痺に対する鍼治療の実際とエビデンス」日本医事新報社(2024)

